春日井シティ不動産のブログ
KASUGAI CITY REAL ESTATE
2025/04/26
Vol.74 【実例】20年前の自殺疑惑が契約後に発覚|土地売却はどうなった?
「昔、あの家で自殺があったらしい——」
不動産売買では、契約した後になって、それまで聞いていなかった話が出てくることがあります。
今回ご紹介するのは、私が実際に仲介した春日井市内の土地売買で、契約後に「20年ほど前に自殺があったらしい」という話が出てきたケースです。
しかも最後まで、それが自殺だったのか事故だったのか、はっきり確認することはできませんでした。
それでも買主にとっては無視できない話です。
売主はどう判断したのか。契約はどうなったのか。そして、その土地は最終的に売れたのか。
実際の取引を振り返りながら、人の死に関する事情がある不動産を売るときに何が重要なのかをお伝えします。
売買契約後に浮上した「20年前の自殺疑惑」
十数年前、春日井市内にある約120坪の土地売却を依頼されました。
土地には空き家が建っており、売主はすでに市外へ転居していました。
解体更地渡しの条件で売り出したところ、ある建売業者から4,600万円で購入申込みが入り、売買契約が成立しました。
ところが契約から数週間後、近隣の方からこんな話が入ってきました。
「昔、あの家で子どもが自殺したらしい」
契約時に売主からそのような説明はなく、物件状況告知書にも事件・事故等はない旨が記載されていました。
問題は、ここからです。
その話は事実なのか。それとも近所に残っている噂なのか。
確認が必要になりました。
売主の説明は「自殺ではなく事故だった」
あらためて売主へ確認すると、売主からは、
「確かに20年ほど前に子どもが亡くなった。ただ、自殺ではなく事故だった」
という説明がありました。
一方、近隣からは、当時救急車や警察が来ていたという話もありました。
しかし、それだけで自殺だったと断定することはできません。
時間もかなり経過しています。
結局、私たちが確認できたのは、「過去に子どもが亡くなったこと」と「自殺だったという近隣の話があること」まででした。
自殺だったのか事故だったのかを、確定させることはできませんでした。
買主は「事実かどうかだけの問題ではない」と判断
買主は建売業者でした。
買主側が問題にしたのは、「本当に自殺だったのか」だけではありません。
土地を購入して住宅を建て、それを一般のお客様へ販売する立場です。
そのため、たとえ自殺だったことが確認できなくても、
「過去に自殺があったと言われている土地」
という話そのものが、将来の販売に影響する可能性を心配しました。
買主は契約通りに購入することに強い抵抗を示しました。
💡 不動産では「事実」だけでなく、その事実が買主の判断にどう影響するかが問題になります
特に事業者が再販売する土地では、将来その住宅を購入する人がどう受け止めるかまで考えて購入価格や購入可否を判断します。
売主が選んだのは「手付解除」だった
最終的に売主は、手付解除によって契約を終了することを選びました。
この判断には、いくつもの事情がありました。
- 自殺だったことは確認できていない
- 一方で、過去に子どもが亡くなったこと自体は事実だった
- 買主はこのまま購入することに強い抵抗を示していた
- 契約上の責任を巡って争えば、時間も費用もかかる
- 売主自身も、家族の過去をめぐって争い続けることを望んでいなかった
売主には、契約通りの履行を求めて争うという考え方もありました。
ただ、最終的に売主が優先したのは、「この取引をこれ以上こじらせないこと」でした。
金銭的な負担を受け入れてでも、一度契約を終わらせて仕切り直すという判断です。
⚠️ 契約解除できるか、違約金が発生するかは契約内容や事実関係によって変わります
今回の事例と似ているからといって、同じ対応になるとは限りません。すでに売買契約を締結している場合は、契約書の内容を確認したうえで個別に判断する必要があります。
そして、この土地は最終的にどうなったのか?
一度契約を解除した後、土地をあらためて売却することになりました。
今度は、
- 約20年前に子どもが亡くなったこと
- 自殺だったという話が近隣から出ていること
- 売主は事故だったと認識していること
- 自殺か事故かは確認できていないこと
- その話が原因となって前の契約が解除されたこと
こうした事情を、最初から説明したうえで販売しました。
そして、事情を理解した別の建売業者が購入しました。
売却価格は3,450万円。
最初の契約価格4,600万円から見ると、1,150万円低い価格です。
約25%の価格差になります。
ただし、これはあくまでこの取引で実際に起きた結果です。
「自殺があった土地は25%下がる」という意味ではありません。
人の死に関する事情が価格にどの程度影響するかは、出来事の内容、経過年数、周知性、建物を残すのか解体するのか、その土地自体の需要などによって変わります。
この取引で一番大きかったのは「価格」より買主が変わったこと
この事例を「事故物件だから25%値下げした話」とだけ見ると、本質を外すと思います。
重要だったのは、この事情を理解したうえで購入できる買主を探し直したことです。
最初の買主にとっては受け入れられないリスクでも、別の買主なら価格条件を含めて検討できることがあります。
事故や自殺などの事情がある不動産は、単純に価格を下げれば売れるわけではありません。
「誰ならこの不動産を買えるのか」を考えることが重要です。
事故物件の価格や告知の基本的な考え方については、Vol.49「事故物件でも売れる?自殺・孤独死・自然死の告知義務と売却価格を解説」で詳しく整理しています。
20年前の出来事なら、もう告知しなくてもいい?
「20年も前なら、もう言わなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、売買について「○年経てば一律に告知しなくてよい」という期間が決められているわけではありません。
人の死に関する事情が買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、経過年数だけで機械的に判断することはできません。
逆に、自然死など原則として告げなくてもよいと整理されているケースもあります。
つまり、「人が亡くなった=全部告知」「昔の話=全部告知不要」のどちらでもないということです。
では「噂」まで買主に伝える必要がある?
ここが今回の事例で一番難しいところです。
近隣から聞いた話だけで、「ここで自殺がありました」と事実のように説明することはできません。
一方で、契約後にそのような話を把握したのに、何も確認せずそのまま進めることにもリスクがあります。
今回のような場合には、
- 何を聞いたのか
- 売主は何を知っているのか
- 確認できた事実は何か
- 確認できなかったことは何か
を分けて整理することが重要です。
分からないことを勝手に事実にしない。しかし、気になる情報を無かったことにもしない。
この姿勢が、不動産取引では大切だと思います。
仲介会社は近所への聞き込みまでしないといけない?
人の死に関する事案について、宅地建物取引業者が毎回近隣へ聞き込みをしたり、インターネットで過去の事件を探したりすることまで、通常求められているわけではありません。
通常は売主に告知書などへの記載を求め、知っている事実を確認します。
ただし、取引の途中で今回のように人の死に関する事案を疑う事情が出てきた場合には、そのまま無視するのではなく、売主へ確認するなど事実関係を整理する必要があります。
💡 「確認できた事実」と「確認できない話」を分ける
事故物件の相談では、この区別が非常に重要です。噂を事実として扱うのも、都合が悪いから無視するのも適切ではありません。分かっていることを整理したうえで、買主への説明方法を考えます。
この取引から学んだこと
この取引は、今でも印象に残っています。
売主が最初から何かを意図的に隠そうとしていた、と単純に言える案件ではありませんでした。
一方で、買主にとっては事業として無視できない問題でした。
そして最終的には、一度契約を解除し、事情を説明したうえで別の買主へ売却することになりました。
この経験から強く感じるのは、不動産売買では「不利な情報を隠さないこと」と同じくらい、「確認できていないことを断定しないこと」が重要だということです。
問題のある不動産を無理に普通の物件として売るのではなく、事実関係を整理して、それを理解して購入できる相手を探す。
その方が、結局は売主を守ることにもつながります。
まとめ|20年前の自殺「疑惑」でも、売買は大きく動いた
- 契約後に「20年前に自殺があったらしい」という話が出た
- 売主は事故だったと認識しており、自殺だったことは確認できなかった
- 買主は将来の再販売への影響を懸念した
- 最終的に売主は手付解除を選択した
- その後、事情を説明したうえで別の買主へ売却した
- 4,600万円の当初契約に対し、最終売却価格は3,450万円だった
- 約25%の価格差はこの事例の結果であり、事故物件一般の値下がり率ではない
- 売買には「○年経てば告知不要」という一律の期間はない
- 確認できた事実と確認できない情報を分けて扱うことが重要
この土地は、最終的には売れました。
ただ、「事故物件でも簡単に売れる」という話ではありません。
一度契約が解除され、価格も大きく変わり、買主も変わっています。
問題がある不動産ほど、事実を整理し、その事情を理解できる買主を探すことが大切です。
春日井市で「昔の出来事がある不動産」を売りたい方へ
「昔、家族が自宅で亡くなっている」
「近所では事故物件と言われているが、本当か分からない」
「何十年も前のことを、買主にどこまで話せばいい?」
こうした不動産は、売主自身で告知の要否を判断するのが難しい案件です。
春日井シティ不動産では、まず「分かっていること」「分からないこと」を整理します。そのうえで、売却価格、買主への説明、仲介での売却・買取など、現実的な売却方法を考えます。
春日井市の事故物件・告知事項のある不動産の売却相談
「これって買主に言う必要がある?」という段階でも構いません。事実関係を整理してから、売却方法を考えます。
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監修者情報

-
春日井シティ不動産株式会社
山本 直嗣
