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2026/05/29

Vol.111 なぜ人は「自分の不動産だけは高く売れる」と思ってしまうのか

「この辺りでこんな安いわけがない」「うちの実家はもっと価値があるはず」「隣はもっと高く売れたのに」——不動産売却の相談を受けていると、こういう言葉をよく耳にします。

もちろん、その気持ちはよくわかります。なぜなら、その家は単なる「建物」ではなく、その人の人生そのものだからです。ただ、実はこれ、不動産に限った話ではありません。心理学的に見ると、人は誰でも「自分のもの」を少し高く評価してしまう傾向があります。

「保有効果」——持っているだけで価値が上がって見える

行動経済学に「保有効果」という概念があります。人は何かを所有した瞬間から、その対象に対して実際の市場価値より高い価値を感じるようになるというものです。マグカップの実験が有名で、マグカップを受け取った人は「売りたい価格」が受け取っていない人の「買いたい価格」の約2倍になったという結果が出ています。

不動産でこれが起きるとどうなるか。30年住んだ実家は、所有しているだけで「それだけの価値がある」と感じやすくなります。ローンを払い続けた・手入れをしてきた・思い出がある——こういった事実が「価値の根拠」として頭の中に積み重なっていきます。でも市場はその積み重ねを評価しません。

売主は「人生」を見ていて、買主は「商品」を見ている

売主にとって実家には人生の物語があります。子どもを育てた・家族で暮らした・ローンを払い続けた・親との思い出がある。だから「安いですね」と言われると、家の価値ではなく自分の人生を否定されたような気持ちになることすらあります。これは本当に自然な感情です。

一方で買主側はかなり冷静です。見ているのは築年数・立地・駐車場・日当たり・周辺環境・リフォーム費用・総額といった現実的な条件です。売主と買主の間にある「価値の見え方」のズレ——これが不動産売却を難しくする根本的な原因の一つです。

「売れない」のではなく「価格が市場とズレている」ことが多い

実際、不動産は価格次第で売れるケースがほとんどです。ただ相場より高すぎると、問い合わせが来ない→内覧が少ない→売れ残る→「何か問題があるのかな」と思われる、という流れになりやすい。結果として後から値下げすることになり、最初から適正価格で出していた方が良かったというケースも少なくありません。

不動産屋も「高く売れます」と言いたくなる——業界の本音

ここは業界の本音ですが、「高く売れますよ」と言った方が売却依頼は取りやすいです。実際、査定価格の高さで不動産会社を選ぶ方も多い。ただ本当に大切なのは「高く見せる査定」ではなく「現実的に売れる価格」を一緒に考えることだと思っています。

「高く売りたい」気持ちと「市場の現実」の間で

「少しでも高く売りたい」という気持ちは当然です。ただ不動産売却は感情だけでも数字だけでもうまくいきません。なぜ売るのか・いつまでに売りたいのか・何を優先したいのか——そこを整理しながら「希望」と「市場」の間をどう着地させるか。そこが不動産売却の本当の難しさだと思っています。

👉 関連記事:「査定価格」と「実際に売れる価格」はなぜ違う?不動産の価格が決まる仕組みを正直に解説

👉 関連記事:机上査定と訪問査定の違いとは?どちらを選ぶべきか状況別に正直に解説

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