春日井シティ不動産のブログ
KASUGAI CITY REAL ESTATE
2026/07/11
Vol.132 「生前に売れば得」は本当か?実家の売却タイミングを、税金と現実の両方から解説します
「親が元気なうちに実家を売った方が、税金面で得らしい」——そう聞いて、当社にもよくご相談をいただきます。事実として間違ってはいません。ただ、税金の話だけを見て判断すると、実際にはうまくいかないケースがほとんどです。今回は、税金の差額と、それ以上に大事な「実際に動けるかどうか」の現実を、正直にお伝えします。
まず事実として:税金だけで見れば「生前に売る」方が有利なことが多い
売却価格3,000万円・取得費が不明のため概算取得費5%(150万円)・長期譲渡(5年超保有)という条件で比較します。
親御さんが生前に実家を売り、現金で相続する場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」が使えれば、譲渡所得税はゼロになります。一方、相続してから売る場合、「空き家の3,000万円特別控除」が使えないと、譲渡所得(3,000万円-150万円=2,850万円)に対して約20.315%の譲渡税がかかり、約579万円の負担になります。
この差だけを見れば、「生前に売った方が得」という話は事実です。ただし、これはあくまで税金だけを比較した場合の話です。
「空き家3,000万円控除」は条件が厳しく、使えないことも多い
相続後に空き家を売る場合でも、条件を満たせば3,000万円控除が使えることがあります。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建てられた旧耐震の戸建てであること、相続開始時に空き家で誰も住んでいないこと、耐震改修または解体して売却すること、売却価格1億円以下、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること、相続後に賃貸や居住などの利用歴がないことです。マンションや同居歴があると対象外になるケースが多く、あてにしすぎない方が現実的です(詳しい条件はVol.106で解説しています)。
この特例は令和6年(2024年)に改正され、以前より使いやすくなった面があります。従来は売主が売却前に耐震改修や解体を終えている必要がありましたが、改正後は買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修・解体を行えば適用対象になります。「解体費を先に用意できないと売れない」という負担が減りました。
一方で、令和6年1月1日以降の譲渡からは、相続人が3人以上いる場合、控除額が一人あたり2,000万円に引き下げられている点には注意が必要です(相続人が1人・2人の場合は3,000万円のまま)。「使いやすくなった」と「控除額が下がることもある」は両方とも事実で、実際にいくら控除できるかはご自身の相続人数によって変わります。
でも、税金より先に立ちはだかる「動けるかどうか」の壁
ここからが、当社が実際のご相談で一番お伝えしていることです。「生前に売れば得」という話は、あくまで「実家が空き家であること」を前提にしています。しかし現実には、親御さんがまだ実家に住んでいるケースがほとんどです。
親御さんが実際に住んでいる実家を売却するのは、簡単なことではありません。高齢になってからの住環境の変化は、本人にとって大きな負担になります。親御さん自身が積極的に売りたいと思っていないことも多く、子の側からしても「まだ元気に住んでいる親を、税金のために動かす」という決断には、大きな心情的なハードルがあります。実務的に可能かどうかの前に、そもそもご家族の気持ちが追いつかない、というケースが実際には最も多いパターンです。
空き家であっても油断できない:認知症と成年後見制度の壁
「それなら、空き家になってから急いで売ればいいのでは」と思うかもしれません。ですが、ここにも見落としやすい壁があります。親御さんに認知症などによる判断能力の低下が見られると、実家の売却に必要な本人の意思確認ができなくなり、事実上動けなくなることが少なくありません。
この場合、成年後見制度を利用する方法がありますが、成年後見人が本人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。許可を得ずに売却した契約は無効になります。家庭裁判所は、売却の必要性、本人の生活・看護の状況、本人の意向、売却条件、売却代金の使途などを慎重に審理するため、手続きには一定の時間がかかります。「元気なうちに」という時間は、実際にはそう長くありません。
では、どう考えればいいのか
正直にお伝えすると、「税金だけで見れば生前売却が得」という情報は、実際の意思決定にはあまり役立たないことが多いです。大事なのは、税金・実務・家族の気持ちの3つをセットで整理しておくことです。今すぐ動く必要がなくても、「うちの場合は今どういう状況なのか」を早めに整理しておくと、いざというときの判断がしやすくなります。
そして、整理した結果「今は動かない」という結論になることも、まったく問題ありません。むしろ、税金の損得だけで急いで判断しなかったことが、後から正しかったと分かるケースもあります。
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💬 「実家を売るタイミングに迷っている・税金だけでなく現実的に判断したい」という方へ。
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監修者情報

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春日井シティ不動産株式会社
山本 直嗣
