春日井シティ不動産のブログ
KASUGAI CITY REAL ESTATE
2026/05/28
Vol.110 土地を売らずに事業者に貸す「事業用定期借地」という選択肢。業種別・土地条件を整理します
「土地は手放したくないけど、このまま遊ばせているのももったいない。何か貸せないか?」
幹線道路沿いや交通量の多い場所に土地を持つ地主様から、こういうご相談をいただくことがあります。「売る」以外の選択肢として「事業者に土地だけを貸す」という方法があります。今回は「事業用定期借地」という仕組みを、普通借地との違いも含めてわかりやすく整理した上で、どんな土地に向くのか・どんな業種が借手になりうるのかを正直にお伝えします。
まず「普通借地」と「事業用定期借地」の違いを整理する
土地を貸す契約には大きく「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があります。この違いを理解しておくことが地主にとって非常に重要です。
普通借地権は、契約期間が満了しても借主が希望すれば原則として契約が更新される仕組みです。地主が更新を拒否するには「正当な事由」が必要で、借主の権利が非常に強く守られています。さらに契約終了時に借主が「建物を時価で買い取れ」と請求できる「建物買取請求権」もあります。つまり「一度貸したら事実上戻ってこない」リスクがあるのが普通借地権です。
一方、事業用定期借地権は更新という概念がありません。あらかじめ定めた期間(10年以上50年未満)が満了すれば契約は確実に終了し、借主は建物を解体して更地で返却します。地主は正当事由も立退き料も不要で土地を取り戻せます。「期間が来れば必ず戻ってくる」という点が地主にとって最大の安心です。なお事業用定期借地契約は必ず公正証書で締結する必要があります。
| 項目 | 普通借地権 | 事業用定期借地権 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 30年以上(更新あり) | 10年以上50年未満(更新なし) |
| 期間満了後 | 原則自動更新・返還困難 | 確実に終了・更地返還 |
| 建物買取請求権 | あり | 特約で排除可能 |
| 用途 | 居住用・事業用どちらも可 | 事業用のみ(居住用不可) |
| 契約方法 | 書面・口頭どちらも可 | 必ず公正証書 |
事業用定期借地のメリットとデメリット
地主にとってのメリットは、建築費用の負担がゼロで地代収入だけを得られること・期間満了後に確実に土地が戻ってくること・将来の売却や自己利用の選択肢を残しながら収益化できることです。相続税対策としても、借地権が設定された土地は更地より評価額が下がるため一定の節税効果があります。
一方でデメリットもあります。一度契約すると地主側から途中解約ができないこと・借手が倒産・撤退した場合に次の借手を自分で探す必要があること・居住用には使えないため借手の業種が限られること・そもそも借手が見つかる土地の条件が限られることです。「当面使う予定がない土地」であることが大前提で、将来的に自分や家族が使いたい可能性がある土地には向きません。
どんな土地に向くか——「どこでも借手が見つかるわけではない」
正直に言うと、事業用定期借地で借手が見つかる土地は条件が限られます。事業者にとって「そこに出店する意味があるか」が全てだからです。
借手が見つかりやすい土地の条件は、交通量が多い幹線道路・国道・バイパス沿いで視認性が高いこと・まとまった面積と十分な駐車場スペースが確保できること・周辺に一定の人口・世帯数があること・用途地域が商業系・準工業系など事業用途に対応していることです。逆に住宅街の中の土地・狭小地・接道条件が悪い土地・交通量が少ないエリアでは借手を見つけるのは難しいのが現実です。
業種別の条件——必要な土地の広さと立地
事業用定期借地の借手として想定できる主な業種と、それぞれに必要な条件を整理します。ただし必要面積はあくまで目安で、規模・業態・駐車場台数によって大きく変わります。
クリニック・医療施設
開業医が土地を購入せずにクリニックを建てるために事業用定期借地を利用するケースが増えており、愛知県でもニーズが高い業種です。必要面積は診療科目と規模によって大きく変わります。
建物面積の目安は内科系で30〜50坪・整形外科など外科系で50〜70坪・眼科で30〜60坪・歯科で25〜40坪程度です。ただし建物面積だけでなく駐車場スペースが同等以上に必要で、土地全体では建物面積の2〜3倍程度を確保することが多いです。幹線道路沿いで視認性が高く、周辺に同じ診療科目がないエリアが出店候補になります。
ドラッグストア・調剤薬局
生活必需品・医薬品の需要が安定しており長期運営を前提とするため、10〜20年の長期契約になりやすい業種です。ロードサイド型の大型店舗では駐車場30〜50台規模が標準で、敷地全体で300〜500坪程度が必要になるケースが多いです。周辺にクリニックがあれば調剤薬局を併設した形での出店需要も生まれます。近年は食品売り場を拡充しスーパーに近い形態になってきており、より広い土地を求める傾向があります。
飲食店(ファミリーレストラン・ラーメン・焼肉など)
ロードサイド飲食は車での来店を前提とするため、駐車場の確保が最重要です。店舗面積30〜50坪に加えて駐車場スペースが必要で、土地全体で150〜300坪程度が目安になります。ファミリーレストランや回転寿司・焼肉・ラーメンなどが代表的な業種です。賃料水準は比較的高く設定できる傾向がありますが、経営が行き詰まって撤退するリスクもあります。撤退時の設備・厨房機器の撤去・解体費用の負担を契約時に明確にしておくことが重要です。
コンビニエンスストア
かつては「30坪の土地でもできる」というイメージがありましたが、近年のコンビニは大型化が進んでいます。店舗面積は50〜60坪程度が一般的ですが、郊外・ロードサイド型では駐車場込みで300坪以上・できれば500〜600坪以上が出店の目安になっています。大型トラックも駐車できるスペースがあるとより適地となります。フランチャイズ本部が出店エリアを厳密に分析するため、競合他店との距離・交通量・周辺人口が出店判断の基準になります。
時代によって変わる業種——今後注目されるカテゴリ
ロードサイド店舗の業種は時代によって変わります。かつてはレンタルビデオ店・美容院チェーン・パチンコ店のロードサイド出店が多かったですが、業界の縮小・変化とともに撤退が増えました。近年はフィットネスクラブ・リサイクルショップ・学習塾・保育所・福祉施設(デイサービスなど)などが新たなロードサイド需要として出てきています。福祉施設はロードサイドに限らず住宅地内でも需要があり、今後の高齢化を考えると長期的なニーズが見込まれます。
まず「あなたの土地に借手がつく可能性があるか」を確認することが先決
事業用定期借地は条件が揃えば地主にとって非常に有利な土地活用です。ただし「どこでも借手が見つかるわけではない」というのが現実です。まず土地の立地・面積・接道・用途地域・周辺の需要を確認した上で「この土地でどんな業種のニーズがあるか」を整理することが最初のステップです。また定期借地は長期契約になるため、家族間で「当面使う予定がないか」を十分に確認してから進めることが重要です。
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監修者情報

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春日井シティ不動産株式会社
山本 直嗣
