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2026/06/06

Vol.115 正直に言うのが良い不動産屋か?

先日、映画『正直不動産』を観てきました。面白かったです。ただ、観ながらずっと引っかかっていたことがありました。それは、「不動産屋は正直にさえしていれば良いのだろうか」ということです。もちろん、嘘はいけません。事実を隠してもいけません。

しかし、現実の不動産取引は「正直か嘘か」だけで語れるほど単純ではないと思うのです。

本音をそのまま伝えれば、取引はまとまらない

私は20年以上、不動産売買の仲介をしています。仲介とは、売主と買主の間に立つ仕事です。売主は少しでも高く売りたい。買主は少しでも安く買いたい。これは当たり前のことです。当然ながら、物件の欠陥や法的な制限、境界の問題、災害リスクなど、取引の判断に関わる重要な事実は必ず双方に伝えます。これは義務であり、誠実さの最低条件です。しかし、「本音」は別の話です。

例えば売主が、「本当は1,800万円で売りたいけど、1,500万円でも仕方ないと思っている」と話したとします。これをそのまま買主に伝えたらどうなるでしょう。おそらく買主は1,500万円で購入を希望します。売主は本来得られたかもしれない利益を失います。

逆に買主が、「できれば1,500万円で買いたいけど、1,700万円でも買うつもりだ」と思っていたとします。これをそのまま売主に伝えれば、売主は価格を下げる理由がなくなります。結果として買主は損をします。

事実を隠してはいけない。嘘をついてもいけない。しかし感情的な言葉や、その場の本音をそのままぶつければ良いわけでもない。

相手の立場を理解しながら整理し、誤解なく伝え、合意点を探していく。そこに仲介という仕事の価値があると思っています。そしてこの考え方は、売買交渉だけでなく、相続や空き家の相談でも同じです。

感情と現実の間に立つ

相続した実家の相談を受けていると、特にそう感じます。数字だけを見れば答えは簡単です。空き家を持ち続ければ、固定資産税がかかる。火災保険料がかかる。草刈りや管理費も必要になる。建物は年々老朽化していく。だから、「早く売った方がいいですよ」と言うのは簡単です。

でも、その家は単なる建物ではありません。父や母と暮らした場所かもしれません。仏壇があるかもしれません。大切に育てた庭木があるかもしれません。近所には長年付き合いのある方もいます。そんな思いが詰まった家に対して、「いますぐ売るべきです」と言うだけなら、相談者の気持ちを置き去りにしてしまいます。

かといって感情だけを優先していても、問題は解決しません。現実だけでは冷たい。感情だけでは前に進めない。私は、その間に立つのが不動産屋の役割だと思っています。

耳障りの良い話だけはしません

ただし、寄り添うことと迎合することは違います。私は、お客様にとって耳障りの良い話だけをするつもりはありません。

春日井市でも人口減少は少しずつ進んでいます。今は需要がある地域でも、10年後、20年後に同じ状況が続く保証はありません。私は未来を予言できるわけではありませんが、20年以上この地域で仕事をしていると、「今は売れるけれど、将来は厳しくなるかもしれない」と感じる土地や空き家もあります。

そういう時は、「今のうちに動いた方がいいと思います」とはっきりお伝えします。その方の5年後、10年後を考えた結果です。逆に、「今は急いで売らなくてもいいと思います」とお伝えすることも少なくありません。

不動産屋の仕事は、売却を勧めることではなく、その人にとって最適な選択を一緒に考えることだと思っています。

正直不動産より、現実不動産

売ると決めているわけではない。査定だけしてほしい。家族の意見がまとまっていない。まだ気持ちの整理がついていない。そんな段階の相談も、私は歓迎しています。結論を急ぐ必要はありません。まずは現実を整理すること。そして、その現実の中で何が最善なのかを一緒に考えること。

それが大切だと思っています。

正直であることは大切です。でも、現実の不動産取引は「正直か嘘か」だけでは語れません。感情もある。事情もある。将来への不安もある。だから私は、正直不動産というより、現実不動産。そして、その現実に誠実でありたい。

そんな不動産屋でありたいと思っています。

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💬 「売るか迷っている・まず話だけ聞いてほしい・査定だけしたい」という方へ。
結論を急かしません。現実を一緒に整理するところから始めましょう。
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